六本木ヒルズの毛利庭園を訪れたとき、池の中をゆったり泳ぐメダカを見かけて、「あれ、何か普通のメダカと違う?」と感じたことはありませんか?
実はあのメダカ、ただのメダカじゃないんです。名前も「宇宙メダカ」。1994年にスペースシャトルで宇宙に行ったメダカの子孫なんです。2003年の放流からもう20年以上が経ちましたが、今もなお、その命はしっかりと受け継がれています。
この記事では、毛利庭園のメダカがどんな特徴を持っているのか、なぜ「宇宙」という名前がついているのか、そして今、どんな活動が続いているのかまで、現地ではなかなか知ることのできない背景も含めてお届けします。
毛利庭園のメダカは「宇宙メダカ」の子孫だった
毛利庭園の池で泳ぐメダカの正体は、「宇宙メダカ」の子孫です。1994年、スペースシャトル・コロンビア号に乗って宇宙へ旅立ったメダカたちがおり、そこで産まれた卵から育てられた個体が、その後の実験や飼育を経て、この庭園にやってきました(森ビル株式会社公式サイト、公開中)。
では、なぜそんなメダカが六本木のど真ん中にいるのでしょうか。それは2003年7月25日のこと。毛利衛宇宙飛行士や約800人の「里親」たちの手によって、約1万匹の宇宙メダカが毛利池に放流されました(森ビル株式会社プレスリリース、2003年7月16日)。この放流会には、なんと15,000件もの里親の応募があったそうです。それだけ多くの人が、このプロジェクトに魅力を感じていたんですね。
ちなみに、この池が「毛利庭園」と呼ばれるのは、ここが旧長府藩毛利家の上屋敷跡だったことに由来します。歴史ある庭園に、未来から来たような宇宙メダカが泳いでいる。そのギャップが、またなんともロマンチックですよね。
ただのメダカじゃない?「宇宙メダカ」のここがスゴい
では、毛利庭園のメダカは、見た目にも特別な特徴があるのでしょうか。
実はこれ、一般に「宇宙メダカ」と呼ばれる系統のメダカには、明確な品種名があるわけではありません。観賞魚として販売されている「ヒメダカ」や「楊貴妃」のように、特定の体色や体型で品種登録されているわけではないんです。
ただし、メダカの品種改良に詳しい方の間では、「宇宙メダカはヒカリ体型の特徴を持つのではないか」とも言われています。ヒカリ体型とは、背骨を中心に上下が対称的で、尾ビレが菱形になるのが特徴です(アクアリッサム、2024年3月)。ただ、毛利庭園の個体すべてがそうだとは断言できず、実際にどのような形質が固定されているのかは、一般公開されている情報が限定的なのが現状です。
つまり、毛利庭園のメダカの一番の特徴は、見た目よりもストーリーにあるんですね。「宇宙を経験したメダカの子孫」という、それだけで十分すぎるほどの特別なバックグラウンドを持っているんです。
実は今も続いている「宇宙メダカ」の物語
ここでちょっと驚きの事実を。多くの人は「宇宙メダカの話って、昔のイベントでしょ?」と思っているかもしれません。ところがどっこい、今もこのプロジェクトに関わる活動は続いているんです。
「宇宙メダカ研究会」という団体が、1995年の発足以来、ずっと活動を続けています。そして2024年9月22日には、なんと「宇宙メダカ実験30周年記念大会」が開催されました(宇宙メダカ研究会公式サイト、2024年9月22日)。つまり、30年近くにわたって、宇宙メダカの研究や保全、そしてその魅力を伝える活動が続けられているんです。
毛利庭園に放流されたメダカは、その後も自然に世代を重ね、今も池の中で泳ぎ続けています。特別な餌やりや保護活動が一般公開されているわけではありませんが、この研究会のようなコミュニティが、裏側でしっかりと見守り続けているんですね。
現地で宇宙メダカを観察するときに見てほしい3つのポイント
せっかく毛利庭園を訪れるなら、ただ「メダカがいるな」で終わらせたくないですよね。ここでは、実際に現地で観察するときに意識したいポイントを3つご紹介します。
①説明書きをしっかり読む
池のそばには、宇宙メダカの由来が書かれた説明板があります。この記事を読んだ後なら、さらに深く理解できるはず。まずはここでストーリーを頭に入れてからメダカを見ると、感動が何倍にもなります。
②ヒカリ体型っぽい個体を探してみる
すべての個体がそうとは限りませんが、背中がピンと張って、尾ビレがひし形に見える個体がいれば、それがいわゆる「ヒカリ体型」の特徴かもしれません。普通のメダカと見比べながら観察すると、より深い楽しみ方になります。
③池の環境ごと楽しむ
実はこの毛利池の下には、かつてニッカウヰスキーの工場があった時代の「ニッカ池」が埋められたまま保存されているんです(港区公式サイト、2021年9月)。歴史の上に歴史が積み重なり、その上で宇宙メダカが泳いでいる。そんな想像をしながら見ると、ただの鑑賞がタイムトラベル気分に変わりますよ。
本当に「宇宙メダカ」は減っているの?
ここで、ちょっと気になる声をご紹介しましょう。X(旧Twitter)で「毛利庭園 宇宙メダカ」を調べると、実際に訪れた人たちの投稿がいくつも見つかります。
多くの人は「かわいい」「癒される」「初めて見た!」と感動しているんですが、中には「昔より数が減った気がする」「カモが多くてメダカが目立たない」といった声もありました(X、2026年8月6日確認)。
確かに、池にはカモなどの水鳥も多く、彼らがメダカを食べてしまう可能性はゼロではありません。また、都市部の閉鎖性水域であるがゆえの水質変化や、気候変動の影響も考えられます。ただ、正確な個体数が公表されているわけではないので、「減った」というのがどの程度なのかは確認できていません。
それでも、メダカが完全にいなくなったという報告はなく、今も多くの人が現地でその姿を楽しんでいるのは間違いないようです。訪問するときは、水鳥の多いエリアとメダカが集まるエリアを比べてみるのも面白いでしょう。
宇宙メダカは買えるの?
ここでよくある疑問。「この宇宙メダカ、自分でも飼いたい!」と思う方もいるかもしれません。しかし残念ながら、毛利庭園の宇宙メダカは一般に販売も譲渡もされていません。あくまで特別な里親プログラムの一環で放流されたものであり、個人が購入できるものではないんです。
もしどうしても宇宙メダカにゆかりのあるメダカを飼いたいというなら、宇宙メダカ研究会が主催するイベントなどで、その子孫にあたる個体が特別に頒布されるケースがあるかもしれません。ただ、これも一般のアクアショップで買えるような話ではありませんし、確実な入手方法は現時点では確認できていません。
つまり、宇宙メダカを観察できるのは、今のところ毛利庭園だけ。そう考えると、現地で出会えること自体が、すごく貴重な体験だと言えるでしょう。
毛利庭園のメダカが教えてくれること
毛利庭園のメダカの魅力は、そのルーツにあります。1994年の宇宙実験から始まり、2003年の放流、そして2024年には30周年の記念大会が開かれるまでになった――この一本の流れが、実にドラマチックなんです。
同時に、このメダカたちは、「命はつながっていく」という当たり前だけど大切なことを、静かに、でも強く教えてくれている気がします。宇宙から地球へ、そして六本木のど真ん中の池へ。その旅路を思うだけで、ただの鑑賞がぐっと深いものになります。
もしあなたがこれから毛利庭園を訪れるなら、ぜひ池のそばで少し立ち止まってみてください。水面をゆっくりと泳ぐその姿には、見た目以上の物語が詰まっています。宇宙メダカは、今日もそこで、静かに、たくましく泳ぎ続けているんです。

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